【ネタバレあり】「泣き虫」は誰だったのか(「DEVILMAN crybaby」感想記)

折角金払ったのだからもう少しこのブログも有効活用していかないと勿体無い!という気持ちが薄れないうちに見たものの感想でも書き散らしておこうと思います。

「マインド・ゲーム」「四畳半神話大系」「ピンポン THE ANIMATION」等を手がけた湯浅政明氏が監督を務める、永井豪「デビルマン」のリメイク「DEVILMAN crybaby」がNetflixで全世界に放映されるというニュースに初めて触れた時、期待と不安が入り混じった気持ちになりました。湯浅政明監督作品はどれも大変素晴らしく、湯浅作品で初めて見た「マインド・ゲーム」を初めて見た時などは「この監督の頭の中は一体どうなってるんじゃ?」と衝撃を受けましたし、「ピンポン THE ANIMETION」は現代風アレンジやオリジナル設定が違和感なく溶け込んでいて、「チャイナが浜田省吾の歌をカラオケで歌うシーン」は本作品で屈指の名場面となりました。以上の理由から「デビルマンを現代風にアレンジする」という試み自体にはそこまで不安を抱きませんでしたし、湯浅作品特有の「グニャグニャしたキャラクター描写」も意外と合うのでないかと思っていたのですが、「KEN THE 390や般若が声優で参加」という記事を読んだ時に「いやいやなんでラッパーがこの作品に出てくるんだよ」と一気に不安な気持ちが襲ってきましたw そして何と言っても数々の少年少女にトラウマを植え付けたであろう「あのシーン」をどこまで・どうやって表現するのか、というのが最大の不安でした。下手に誤魔化すようではアニメ化する意味がありませんし、だからといって露悪趣味的にあのシーンを再現されてもどっちらけなわけで。一体どんなものが出来上がるのだろうかと楽しみにしておりましたら、2018年になって早々(1月5日)に配信開始されるということで、今クール始まっていたアニメを見るよりも先にこちらを全話一気に視聴しました。以下はネタバレ全開での感想となりますので、未見の方がいましたら今すぐNetflixと契約だ!今ならNetflix専用プリペイドカードがローソンとファミマで手に入るから、クレカなくても見られるよ!

【1.エログロ表現について】

上述の「あのシーン」が出てくる9話の話をする前に、全体的なエログロ表現について触れたいと思います。正直自分が想像していた以上に開けっぴろげで、Netflixで配信している内容をそのままで地上波で流すことは絶対に出来ないな、と視聴中に感じました。首チョンパ血ドバドバなんて序の口で、1話のサバトではガンガンドラッグやっている人間がいるわ、男(明)も女(ミーコ)もオナニーするわ(アモンの力が宿った状態の明に至っては天井一面に精液が飛び散るシーンが出てきます)、明はシレーヌとヤるわetc…。「配信サイトの独占放送であること」のメリットとは、いわゆる「地上波コード」を気にすることなく描きたいシーンをそのまま放映出来る点なのだな、と。今年は本格的にNetflixからオリジナルアニメが次々に配信される年になるだろうというのは昨年末のニュース等に触れていて薄々感じてはいましたが、初手でこの作品を持ってくる、ということが「Netflixは放送コードを気にすることなく表現できるプラットフォームなんですよ」というプレゼンに直結していて、Netflix恐るべし…と感じました。

【2.ラッパー起用について】

上記では不安要素として上げていましたが、実際見終わっていくつかの対談記事等を拝見して「ラッパーである必然性があったのだな」と評価を改めました。原作だと彼らは「番長グループ」なわけですが2010年代において流石にそのまま出すわけにはいかず、いわゆる「不良」としての役割を与えられるのに適したものがラッパーだったのだな、と(作中で明言はされていませんが、本作の舞台が明らかに川崎であることを匂わせているのもラッパーグループを違和感なく作品世界に溶け込ませるための手段だったのかもしれません)。ククン(CV:YOUNG DAIS)がミーコに披露するラップは大変素晴らしかったです。そして般若やKEN THE 390等現役バリバリのラッパー達に交じる木村昴さんは半端ないですね。当代ジャイアンにして無類のラップ好き、そして男性声優によるラップ企画で実際に作詞まで手がけてしまうところまで行っていまいました。そのうちジャイアンがラップ歌ったりする回が爆誕するのかなぁと思っています(もうあるのかもしれませんがw)

【3.「絶望」も「希望」も伝えるインターネット】

原作には影も形もなかったけれども当代リメイクするのであれば必須なテクノロジー「インターネット」。これをどう扱うのかで結構物語の雰囲気が変わってきますが、湯浅政明のネット観みたいなのが透けて見えて大変興味深かったです。

明も美樹もスマホ使ってSNSか何かでやりとりしてますし、そもそも美樹自体が「スーパー女子高生陸上選手」みたいな扱いをされていてinstagram(と思しきサービス)で近況報告していたり、了に至っては「天才学者」という肩書を利用して自分でニコ生(と思しきサービス)の配信をやっていたりしたりするわけです(まあ了がニコ生配信やってるのは後のことを考えてやってたのでしょうが)。「悪魔は人間の形をしている!」と人類全体を疑心暗鬼に陥れてから「悪意」がものすごいスピードで拡散していく様は、むしろインターネットというインフラを得た今の方がリアリティを感じたりします。一方で美樹は明の正体を知った上で「それでも信じよう」といった感じの非常にポジティブな意見を発信するわけですが、それに対する悪意に満ちたコメント群(「お花畑」とかその手のジャーゴン)が付くシーンも、「I’m a devilman,too」と世界中のデビルマン達によるカムアウトが広がっていくシーンも、非常に現代的だなぁと。一方的に悪者にするわけでもなければかといってネットの無謬性を過信しているわけでもなく要は使い方次第なのだ、というごく真っ当なネット観を私自身は感じた次第です。

【4.例のシーンについて】

上記のように美樹は疑心暗鬼に塗れた世界の中であっても人を信じようというアティテュードを貫きました。そしてあのシーンがやってくるわけです。そらもう「地獄に落ちろ人間ども!」ってなりますわな。個人的には文句ないです。そして美樹の弟が酷いことなってて、それもまた心をかきむしられました。明の母親のシーンなんかもそうです。

【5.ラストシーンについて】

原作を読んだ時に感じたのは「静寂」でした。しかしながら今作は独自にアレンジを入れてきました。明と了が出会ってから現在に至るまでの回想シーンにおいて人間らしい感情を一切持たず(まあ人間じゃないのですが)泣くことが一切なかった了。そんな了の分まで悲しいことには大いに涙を流す明。デビルマンになっても尚、その心は変わりませんでした。表題である「crybaby(泣き虫)」は明のことを指したものなのだろうと思っていたのですが、明を失った了の慟哭で物語の幕が引かれるのを見ていて、決して明だけのことを示したわけではなかったのだなぁと思い直しました。

【日本アニメ業界における「Netflix元年」の「切り込み隊長」】

2018年がNetflixが本格的に日本のアニメ業界に進出してくるにあたり、本作品はその「切り込み隊長」としての役割も担った形となりました。そして今月は、Netflixおよびボンズと包括的業務提携を結んだことが発表されたProduction I.Gから「B: The Beginning」「A.I.C.O. Incarnation」という2本のオリジナル作品が配信されました。「A.I.C.O」は未見ですがが「B」は8話まで一気に視聴し、あっという間に視聴完了するのが勿体無いなぁと思ったので止めている状況ですw(平田広明さんファンがこの文章を読んでいるのであれば「今すぐNetflixと契約しろ!と熱く主張しておきたいと思います)この2作品について触れた記事を読んだのですが、「アニメ制作会社が配信以外の権利を持つ」という一文は、昨年話題となった某アニメ作品の「どったんばったん大騒ぎ」において言及された(人によっては「諸悪の根源」とも言わんばかりの勢いで糾弾された)「製作委員会方式」と異なる設計思想であることは、今後のアニメ業界において重要な意味を持つのではないかと思います。

Netflix独占配信という試みは本作以前にはポリゴン・ピクチュアズが携わっていて、虚淵玄脚本、ポリゴン・ピクチュアズ製作の「GODZILLA」3部作は劇場上映と併せてNetflixにて独占配信されており、既に第1部は視聴可能となっております(ちなみに第2部の上映は5月なのでバッチリ予習(もしくは復習)できますので皆見に行こうぜ!)。月刊ヒーローズにて連載中の「ソードガイ 装刀凱」は先週末からアニメが配信されました。また皆大好き「バキ」の最凶死刑囚編アニメは今夏に独占配信される予定となっています(既に配信用のページだけは用意されていることを先程ググって知りました)今後も様々なオリジナルアニメ作品が見られると思うと楽しみで仕方ありません。個人的には近い将来「京都アニメーションオリジナルアニメのNetflix独占配信」が実現するんじゃないかなぁと思ったりもします。

アニメ好きで映画好きなら契約していても十分元は取れると思いますのでもしこの記事をお読みになった方でまだNetflixを見たことがない、という方がおられましたら強くオススメします…って、Netflixの手先みたいなことばかり言っていますが、「アヴェンジャー」のスピンオフシリーズである「ディフェンダーズ」各作品とか大好きですし、今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞した「イカロス」なんて昨年から配信されていたりと、値段以上のお得感が感じられますから、そら推しますよええw

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